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2005年3月22日 
第162回国会 衆議院 法務委員会
案件:不動産登記法等の一部を改正する法律案

[1]質疑内容   [2]質疑項目   [3]会議録抜粋


[1] 質疑内容(46分) 「不動産登記法の改正について」   

 本日の委員会では、不動産登記法の改正に関連し、14条地図の整備の必要性を中心に質疑を行いました。
 
 この問題は2年前の法務委員会でも取り上げました。
 いわゆる14条地図(かつては17条地図と呼ばれていました)は、不動産の権利変動を公示する不動産登記制度において最も基礎となるデータですが、この地図のうち、実は現地復元性のあるものは全体の55%しかありません。残りは「公図」と言われる明治時代に作成されたかなりいい加減な地図で構成されています。

 この55%という数字は、昨年一年間で1%しか改善されておらず、その内訳も、国土交通省所管の地積調査事業によるものがほとんどであって、法務省自身が作成した地図は微々たるものです。

 不動産登記の仕組みは民法の私有財産制度を保障する根幹ですので、法務省こそが、積極的に地図の整備を実施するべきではないか、そういった事を改めて主張いたしました。

 また、この14条地図の整備については、不良債権処理の推進の観点等から、特に市街地における整備が注目されていますが、実は山村でも重要になってきています。というのも、境界確定については、過去の経緯といった事も重要な要素となっているのですが、山村の場合、それを知っている地域の古老が少なくなってきていることから、対応が急がれているのです。

 不動産登記に関連し、登録免許税は約5900億円の税収があるわけですから、その一部だけでも地図整備事業に回し、迅速な対応をすべきだと考えます。

[2] 質疑項目

(1) 地図整備事業

  ア 登記を所管する法務省として十分な予算を確保する必要性
  イ 登録免許税の前提としての地図整備の必要性
  ウ 調査の際の地権者及び所有者の同意率
  エ 筆界特定制度の活用の見通し
  オ 山村境界保全事業推進の必要性

(2) 筆界特定手続

  ア 申請者負担費用
  イ 職権で特定する必要がある場合の処置及び費用負担
  ウ 手続費用を公費負担とする必要性
  エ 法的効果
  オ 不服申立手続
  カ 行政処分としての効力の有無
  キ 筆界特定された場合に地図訂正登記等を職権で行う可能性
  ク 表示登記における認定との違い
  ケ 筆界が特定できない場合の処置
  コ 申請人の資格

(3) ADR

  ア 筆界特定制度との連携
  イ 予算措置を講じる必要性

▲up

[3] 会議録抜粋 

○中村(哲)委員

 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 法務委員会では、二年前にこの十四条地図、旧法でいえば十七条地図の関係の質問をさせていただいたということでございまして、このたび質問に立たせていただくことになりました。

 まず私は、十四条地図、旧法十七条地図、法務省が言うところの登記所備えつけ地図についてお尋ねをいたします。

 十四条地図の現状は、昨年、二〇〇四年、平成十六年四月一日現在で、総枚数六百四十万四千枚のうち三百五十万四千枚で、五五%となっております。実は、これは一年間でわずか一%の改善としかなっておりません。さらに、二〇〇三年と二〇〇四年の一年間を比べますと、法十四条地図は九万枚ふえているんですけれども、そのうちの八万枚は国土調査の地籍図、それと土地改良図の方が一万枚。法務局作成の地図ということになると、統計上出てこないんですね。内数を法務省にお聞きしますと、法務局作成地図は四百枚ですと。ということになると、ここの数字には全く出てこない。〇・〇四という数字ですから、誤差の範囲内ということで表にあらわれてこない、そういった本当にわずかな数字になっております。

 予算の方なんですけれども、私が二年前に指摘をさせていただきまして、また、そのときに都市再生本部の方針が出されましたので予算が大幅にふえました。それまでは、平成十三年、十四年、十五年というのは九千百万円でずっと続いてきたんですね。そして、私が質問させていただいて、昨年は三億三千八百万円になりました。そして、十七年度は六億二千二百万円にふえた。そういったことで少しずつはふえてきているんですけれども、実はこの数字、国土交通省所管の地籍整備事業と比べますと著しく少ないんですね。地籍整備事業に関しては事業費ベースで今三百七十三億円になっております。これは与党の皆さんも本当に問題意識は共有していると思うんですけれども、大体約六十倍の予算の差がある。

 私は、この事業というものが法務省の所管であるのならば、少なくとも百億円、二百億円のオーダーで予算が必要だと考えておるんですけれども、大臣のお考えをお尋ねいたします。

○南野国務大臣

 先生御指摘のとおりであります。

 現在の登記所備えつけ地図の整備率は高いものとは言えない現状でございますが、平成十六年の九月に内閣の都市再生本部から示されました「民活と各省連携による地籍整備の推進」、その方針によりまして、法務省と国土交通省が連携いたしまして「全国の都市部における登記所備付地図の整備事業を強力に推進する。」とされております。この方針におきまして、法務省の役割といたしましては、登記官が有する土地の筆界に関するノウハウを生かしまして、早急に地図の整備を進めることが必要な都市部の地図混乱地域を重点的かつ集中的に地図整備を推進することとされております。

 法務省といたしましては、このような観点から必要な予算の確保に努めてきたところであり、今後とも必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。この十七年度も、今はまだ参議院では審査されている途中でございますけれども、案外とつかせていただいたかなと思いますが、まだまだ足りないということは十分に考えております。また、十八年度の予算には先生のお力も十分いただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいです。

    〔田村(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

○中村(哲)委員

 南野法務大臣、漸増していくというのは、それは政府の予算のつくり方として仕方ないかもしれないんですけれども、今お話しになった答弁はほとんど地籍調査の範囲の話なんですね。だから、ここをいかにふやしていくのかというその理論構成をきちんとしていただきたいんです。

 一つのアイデアと、私からもいつも申し上げていることなんですけれども、不動産関係の登録免許税は平成十五年度で約五千九百億と聞いております。権利に関する登記の担税力の前提になっているのがこの表示の登記です。表示の登記があって初めて権利の登記ができる。権利の登記の方で税金が上がるわけだから、その大前提になっている表示の登記はきちんと予算を組んでやりましょうよと言わなくちゃいけないと私は思うんです。そのことについて、こんな状況でいいのかな、登録免許税があるからやはりきちんと整備しないといけないんじゃないですか、そのようなことを申し上げるべきなんじゃないかと考えているわけなんですね。

 だって、地籍調査というのは市町村の事業じゃないですか。それは補助事業ですから、市町村がやりますと言わなければ進まないんですよね。最終的には法務省が、地籍調査でやらない分は私たちがしっかりやりますと、手を広げてやりますということを示していただかなければ、この十四条地図の整備というのは進まないんです。

 そういった意味で、地籍調査の方の事業規模が三百七十三億円であるのならば、少なくとも百億円、二百億円ぐらいのオーダーで、十四条地図の整備事業というのは法務省がやっていく必要があるのではないか。そして、その根拠としては、登録免許税が五千九百億円ぐらい上がっているわけですから、そこを考えたら、バランスを考えても納得してもらえるんじゃないですか。そのことを申し上げているわけですけれども、大臣のお考えをお聞かせいただくとともに、参考人からも補足の説明があればいただきたいと思います。

○南野国務大臣

 本当にしっかりやっていきたいと思っておりますし、十八年度の予算に向けてしっかり頑張りたいというふうに思っております。

○寺田政府参考人

 今、委員から大変厳しい御指摘をいただいたわけでございますけれども、前回も大変核心に迫った御質問をいただいたわけでございます。

 この問題は、私どもとしては大変心苦しい問題です。正直申し上げまして、昭和三十五年まで、この表示登記というものが基本的に本当に登記の仕事なのかどうかということが宙ぶらりんの状態だったわけです。その前、戦前は、これはそもそも税務署所管の問題でございました。税務署が税金を取るために、いわば台帳の附属地図というものを所管いたしておりまして、それをずっと引き継いできて、戦後になりましてそれを法務局が引き継いだ上で、その関係の事務も整備されたのがようやく昭和三十五年だったわけでございます。しかし、それからもう既に四十年たっているわけでございます。

 この間に、昭和三十五年に、その法十七条ということで、現地復元性のある地図を備えるという宣言をいたしまして、それで、基本的な供給をどういうふうにするかということは大変議論がありました。委員がまさにきれいに説明をしていただいたわけでございますけれども、現在の状況では、国土調査によるものが大半で、そのほかに土地改良あるいは土地区画整理のものがこれに次ぎ、法務局自身が作成しているものはごくごくわずか、全体でも四千枚程度にすぎないわけでございます。

 ただ、役割分担の問題といたしまして、そのように、これはいわば国家的事業、税金をも絡めた全体的な事業でございますので、国土調査でもう少しきちっとしてやらなきゃいけないんじゃないかということが国土調査側で随分指摘がありまして、国土調査も都会の中にはなかなか入ってこれなかったために、それで先ほど大臣が説明申し上げたような都市再生の観点から、新たに登記所、法務局を巻き込んだ整備になったわけでございます。

 そういういきさつからしますと、法務局の役割というのは、今までは少なくとも極めて限定的なものだというふうに関係者の間では理解されてきたわけでございますけれども、しかし、法務局もようやく、先ほど申しましたように、いろいろ表示登記の専門家も育ってまいりましたので、重点的にではあれ相当広範囲に、倍数だけで言いますと相当の予算の増額をいただいてきておりますので、今後、鋭意努力をしてまいりたいというふうに考えております。

○中村(哲)委員

 今、寺田民事局長のお話がありましたけれども、その基本的な考え方は、法務省はサブでいいという考え方なんですよ、今までの議論の流れは。だけれども、原則論を考えてみてくださいよ。民法百七十七条の対抗要件の規定があるから不動産登記法というものがあるわけでしょう。そしてその両方の法律は、法務省が所管している法律じゃないですか。

 今まで日本の国の法律のつくられ方がまさに外国からの輸入であって、その趣旨がきちんと理解されていなかったのかもしれません。しかし、近代国家のバックボーンを支える私有財産の制度を保障する民法の規定、これは法務省がきちんと責任を持ってしないと、守らないといけないんですよ。だから、法務省が予算をとってこなくちゃいけなかったんです。だけれども、今まで政治の側もそれを言う人がなかなかいなかったから予算もつかなかったし、法務省の方もそこまで危機感を持って、民法が自分たちの法律だから、民法百七十七条の登記にかかわる部分については必要あるというふうにまで、ひょっとしたら昭和三十五年までは考えてこなかったのかもしれません。そこは認識をきちんと新たにして、今まで間違っていたんなら間違っていた、やはり私たちの本当にしなくちゃいけない仕事だったんだけれども、百年間ほっていましたと、それぐらい言って予算をとってきてほしいんですよ。百億でも二百億でも、本当に必要なんです。

 不動産の流通がなかなか進まない今日、また、都市部だけでないです、後でも聞きます、農村の方の土地の境界の問題はこれから重大になってきます。そういったことを考えると、法務省が主導的に事業をやっていかないといけないんです。そのことについて、大臣、質問通告していますけれども、閣議では何と言っているのか、また財務大臣に何とおっしゃっているのか、お尋ねをさせてください。

○南野国務大臣

 済みません。お答えをする前に、先ほど最初に御答弁申し上げたところで、平成十五年九月に都市再生本部の方針が示されたと申し上げましたが、六月でございますので、その月を私、九月と言ったんでしょうか、訂正させていただきたいと思います。

 それで、今のお答えでございます。

 本当に先生御指摘のとおりだと思いますが、法律の第十四条の地図は不動産の権利変動を公示する不動産登記制度におきまして基本となるものであります。これを十分頭に入れておかなきゃいけないなというふうに思っており、その整備の重要性につきましては十分認識しているところでございまして、これまでその整備の必要性が高い地域に着実に整備を進めてきた、特に中心的なところとかいうところもございますが、今後とも、鋭意地図の整備には取り組んでまいりたいと考えております。

 私も自分の土地が、なかなか地図ができていませんのでいろいろお尋ねすると、今課題になっているところが済んでから、だからまだまだ先だというようなこともございますので、それもなるべく早く、先ほどの税金の問題もございます、早くしていきたいと思っております。

 地図整備の予算につきましては、平成十七年度予算案におきましても増額が認められておりまして、財務当局におきましても地図整備の重要性については御理解をいただいているものと考えております。私から谷垣大臣にもたびたびとつついてございますが、そのつつく一つが刑務所のことであったりとか喫緊の課題、これも喫緊の課題ではありますけれども、そのような形で女性パワーを発揮しているところでございますが、さらに十八年度は頑張っていきたいと思っております。

○中村(哲)委員

 南野大臣、そのつつき方が大事なんですね。本当なら百億、二百億かけないといけないところを、いや六億でいいですと言ったら、それは判こ押しますよ。全体の規模からいって、都市再生本部の予算全体で見たら、これはいきなり百億円ふえているんですよ。だから、向こうは百億円ぽんとつけてもらっているんですよ。それならこっちが何で百億円ぽんとつけてもらえないんですかという話なんです。女性パワーがどこまで生きているかということですね。つつき方が足りないんじゃないかと。

○南野国務大臣

 十八年度予算に関しては、先生のアイデアをいただきながら、つつき方を教えていただきたいと思っております。

○中村(哲)委員

 参考にしていただければ幸いでございます。

 次の質問に移ります。

 地籍調査の方は市町村事業ということで統計がとれないということを国土交通省の方からお聞きしております。そこで、法務省による登記所備えつけ地図、いわゆる十四条地図の作成事業に限ってお尋ねをいたします。地権者、所有者の同意率というのは、これはどれくらいでしょうか。民事局長にお尋ねをいたします。

○寺田政府参考人

 法務局の登記所備えつけ地図の作成作業におきましても、これは実際には土地家屋調査士会の公嘱、公共嘱託の方々に御協力をいただいてやっている作業でございますけれども、いろいろ説明を申し上げ、いろいろな調査をした上で、地権者の方々の立ち会いで同意を得られる場面と同意が得られない場面とございますが、同意が得られない場面もなおございまして、それは筆界未定地ということになるわけでございますけれども、幸い、私どもの平成十五年度の実績からいいますと、ほぼ九九%は同意をいただいております。

○中村(哲)委員

 平成十五年といっても、恐らく四百件ぐらいのうちの九九%ですから四件ぐらいかな、一、二、三、四、それぐらいの数字だと思うんですけれども、なぜこういうお話を聞かせていただいたかと申しますと、今回の筆界特定手続が法務局による十四条地図作成事業や地籍調査事業の中でどのように活用されていくのかということについて政府にお尋ねをしたかったからなんです。

 今、一%未満だ、そういうふうなお話、九九%は同意が得られているということですけれども、同意の得られていない一%の部分にこの手続、筆界特定手続というのがかんできて進んでいくのではないか、そういったことが考えられるわけでございます。

 そういうことで、この筆界特定手続がどのような形で活用されていくとお考えか。また、申請者の負担する費用というのはその場合どういうふうになりますか。また、職権で手続に入ることができない規定になっておりますけれども、必要がある場合は出てくると思います。この場合にはどのようになさるおつもりなのか。以上三点についてお答えください。

○寺田政府参考人

 今御指摘になりましたように、筆界未定地、つまり従前の備えつけ地図の作成作業においては同意を得られないケースというのがあるわけでございますけれども、それについてこの手続を利用するかどうかでございますが、当然のことながら、この手続の利用というのが私ども期待しているところでございます。もちろん、裁判所の境界確定訴訟を排除するものではございませんけれども、簡易迅速な解決というのを一つのモットーにいたしておりますので、この手続によってそういう筆界未定地が解消されていくというのも十分に考えられるわけでございます。

 その場合に費用がどうなるかということでございますが、備えつけ地図の作成作業全体は、これは国の予算でやっております。同意されれば、それはそれで筆界が事実上確定するということでございまして、ここでは当事者の費用の負担はございません。それに反して、同意が得られない、つまり隣人との間で争いがなお残るということについては、この手続を御利用になる場合には費用というのは当事者の御負担ということになるわけでございますが、私どもとしては、できるだけこの手続の御利用を勧めると同時に、関係者の間で費用についてお話し合いになられた上でこの手続を御利用になられるように御説明を申し上げたいというふうに思っております。

○日尾野政府参考人

 筆界特定手続を地籍調査にどう活用するかという御質問でございますけれども、今法務省の方からお話がございましたように、筆界の位置がそれなりに確定されるということ自体が、実は、地籍調査におきまして土地の筆界調査それ自体に大変時間を要している、それぞれの所有権の方々がここが筆界だということで御主張されますので、その調整に大変手間取っているというのが大変大きな課題でございますので、そのために大変有用な手法だろうというふうに考えております。

 現実問題としてはなかなかその筆界が決まらないケースもあるわけでございますけれども、それを解決する意味でも大変役に立つだろうと思っておりますし、また、事前に筆界手続がなされている場合においてはそれを根拠にいろいろな調整もできるという意味で、大変今後の活用を期待しているところでございますので、地籍調査の事業主体でございます市町村に対しましても、いろいろな情報伝達をいたしまして、活用方に尽力をしていきたいと認識しているところでございます。

○中村(哲)委員

 今の寺田民事局長の御答弁で、ちょっと私、聞き漏らしてしまったのかもしれませんけれども、理解できなかった部分が、職権で手続が入ることは今回の手続じゃできないわけですよね。だけれども、十四条地図の作成事業をやっている中では、そういった、この線を決めたいなと思うときが出てくると思うんです。そのときに、職権でできないんだったら、恐らく、所有者に頼んで、これは手続をやってくださいよというお話を多分されるようになると思うんです。そうすると、そこで、申請の手数料がかかりますよね、私は嫌ですよと言われたときに、いや、そう言わないで頼みますよという、そこでどういう会話がなされるのかということはすごく重要になってくるわけですね。

 私は、所有権界と公法上のこの筆界というのは分けて考えるべきだと思っているんです。特に私法上の権利であるものに関しては、確かに、民民の問題だから民間に任せて、手数料もそっちでやってもらったらいいだろう、このように私も考えます。しかし、公法上の境界というのは、基本的に税金を取ったり、また私有財産制度の根幹を支える制度として国が供給するものであったり、そういった目的で備えられるものですから、基本的にはこれは公の費用でやらないといけないものだと思うんです。

 それがあるからこそ、先ほどの登録免許税の話をもう一回持ってきますけれども、登録免許税で何で税金を取っているのか。それは、私有財産制度をそのような形で法務省が守っている、政府が守っている、だから、法律上は公信力ということではないんでしょうけれども、実質上そういった国がかかわっている制度であって、私有財産制を守っている、だから担税力もあって、税金を取ってきている、こういう理屈だと思うんです。

 こういう理屈を考えれば、そのインフラの部分、手数料というか登録免許税という形で税金をきちっと取っているわけですから、こういった費用に関しては基本的に国が予算をつけて、本当に手数料的なものに限るとか、そういうことにしなければ、十四条地図作成事業においてもこの新しい筆界特定制度は利用できないのではないか、このように私は申し上げているわけでございます。そういった意味での御答弁をお聞きしたかったんですけれども、今答えていただけますか。

○寺田政府参考人

 一つのお考えとして、今中村委員がお考えになられたのをさらにもっと徹底すれば、およそ国の費用で全部境界を決めてしまうということも考えられるわけであります。実際に明治時代は、あるいはそういう発想に立っていたのかもしれません。

 ただ、現状を考えますと、境界というのは、必ずしも国の税金というのがメーンに立って存在するというわけではなく、やはりいろいろな意味での物の基本単位ということになっているわけでありますから、全部が全部国の費用でそれを決めてくれというのは、やはりちょっと無理があるんじゃないかなと。とりわけ、争いがある場合に、何らかの形で解決されるものとは別に、とうとう最後まで解決できないものについて当事者の方でそれを解決されたいというときに、それを全く費用負担なしで行うというのはやはり無理だろうというふうに考えておりますので、私どもとしては、できるだけミニマムの費用ではございますが、手数料はいただくという考えでおります。

○中村(哲)委員

 局長、物事の整理の問題なんですよ。私は税金のことだけ言っているわけじゃございません。国の仕事として、税金を取るほかに、もう一つとしては私有財産を守るインフラをつくる、そういった仕事があるわけです。だから、こっちの仕事もあわせて考えた場合には、基本的には筆界を引く作業というのは国の仕事なんじゃないですかということを申し上げているんです。そこを認められないから、お認めにならない理由として税金のところだけ取り出してお話をされるというのは、私はフェアじゃないと思います。

 余り時間がないのでこれ以上申し上げませんけれども、ここはぜひ考え方を変えていただきたい。法務省がなぜこの業務をやっているのか、それは税金のためじゃないんですよ。現代国家と近代国家があるんだったら、現代国家の前提となっている近代国家の一番大事な仕事を法務省が担う、その本来業務としてこの筆界の業務があるということにきちんと法務省が考えを定めていただかなければ、今後の政策は展開できないんです。そこは、ひょっとしたら今現時点で局長とは見解が違うかもしれませんが、ぜひ検討していただきたいと思います。

 時間もありますので、次に参ります。

 都市については、先ほど大臣のお話もありましたように、都市再生本部などの取り組みが見られまして、一定の進捗があるというふうに私も認識しております。しかし一方で、山村境界保全事業というものが平成十六年度から進んでおりますけれども、山村については、平成十六年度で七千七百万円、平成十七年度では八千二百万円と、予算については非常に少ない額しかついておりません。

 しかし、今後この山村の問題というのは、環境問題なども考えると非常に重要になってまいります。京都議定書の問題もあります。やはり山をいかに守っていくのかということが必要なんですけれども、これがなかなか進んでいない。もうこれは時間がないんですよね。今まで山の守りをされていた方たちがどんどん高齢化されてきて、山の境界を決めるというのは、これは慣習が非常に大きな影響があるんですけれども、この慣習がもう忘れられてしまうとか、お亡くなりになられると、慣習を知っている方もいらっしゃらなくなる。

 そういったことで、実は、都市のことも重要なんですけれども、これから、国有林の問題や民有林の問題、山が荒れているという問題もありますので、積極的に取り組まないといけないと考えておりますけれども、法務省、国土交通省、あわせてお答えいただけたらと思います。

○寺田政府参考人

 私どもとしては、とりわけ都市部の問題が深刻でございますので、現在のところ、プライオリティーといたしまして都市部に集中してやっておりますが、おっしゃるとおり、山林の問題も非常に深刻であるという認識は持っております。まさに委員もおっしゃるとおり、過去の経緯というのがこの土地の境界を決めるに当たって非常に重要な資料でございますので、そういうことの失われる前にいろいろな手を打っていかなければならないだろうというふうには思います。

 それで、国土交通省におきまして、委員も御説明になられた山村境界保全事業というのを行っておられて、都市部に比べると非常にラフな形ではありますけれども、いわゆる公図と現況とをすり合わせをするということで、一定の地図のようなものをおつくりになられるということでございますので、私ども、これがどれぐらい登記所の備えつけ地図にとってプラスになるか、現段階では今なお判断がつきかねる問題でございますけれども、今後、十分協議の上、これもプラスにできる部分があればそれを取り入れてまいりたい、このように考えております。

○日尾野政府参考人

 山村部におきます地籍の実施状況でございますが、先生御指摘のとおり、山村部は境界については、土地の古老の人たちのいろいろな記憶やその他いろいろな目印、それから山の形、こんなものに依拠している部分が大変多うございます。

 したがいまして、こういった、山村部が高齢化や不在村化しているという状況でございますので、今後の地籍調査を進める際の大変大きな課題を抱えているんだろうと思っておりますので、先ほど先生が御指摘いたしました山村境界保全事業を実施いたしまして、主としては、山のことをよくわかっております森林組合を活用する手法がないかということでモデル事業を行っているわけでございます。

 そういった努力を続けながら、山村部についても境界問題について緊急性があるというふうに認識しておりますので、しっかりと対処していきたい、こういうふうに思っておる次第でございます。

○中村(哲)委員

 この国土調査法に基づく地籍調査事業というのは基本的に市町村の事業なんですね。市町村の皆さんが私がやるということじゃないと、なかなかできない事業なんです。分権化ですから、それはそれで仕方ないというふうに国がお考えになるんだったら別なんですけれども、私は、土地の筆界というのは、これはやはり近代国家であるのならば国が全体としてやらなくちゃいけない事務だと思うんですよ。だからこそ、山村においても目を向けていただきたいなと。

 特に大臣には、御答弁は結構きょうは都市部の問題ばかりでしたけれども、都市住民も山がないとやはりいい暮らしはできないわけですよね。だから、都市と農村という対立構造で考えるんじゃなくて、農村があるから、山村があるから都市も安心して暮らしていける、そういったことからも、山村の筆界のことについては法務省としてもしっかりと取り組んでいただきたい、大臣にはこのようにしっかりと申し上げておきたいと思います。

 時間もありますので、次に行きたいと思います。

 筆界の特定の法的効果についてでございます。質問通告は細かくしておりますけれども、まとめてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 新しい制度によると、登記官による筆界特定に対して納得がいかない者に対しては、どんな不服申し立ての手段があるでしょうか。

 次に、登記官による筆界特定というのは行政処分ではないのでしょうか。特定は国民を拘束するものであり、行政処分と言えるのではないでしょうか。

 三点目として、例えば、私法の土地の筆界が特定されれば、職権で地積更正登記や地図訂正を行うことになるのではないでしょうか。

 お尋ねをいたします。

○寺田政府参考人

 まず、不服申し立てでございますが、これは通常の行政の処分と異なりまして、専門家をあらかじめ関与させて行う手続で、実質的な不服申し立ては裁判で行うのが適当だという判断で、もし不服がおありになる方は裁判所の境界確定訴訟で争っていただくという仕組みをとっておりまして、不服審査等の手続を設けておりません。

 それから、効力でございますけれども、これも先ほど御説明申し上げましたけれども、行政処分には当たらないというふうに考えています。それは、国民の権利義務に直接影響を与えるものではなくて、あくまで既存の、どこかで決まった境界、筆界というものを発見する、それに証明力を与える、こういう作用だからであります。公定力もございませんし、したがって、行政訴訟で争うということもないわけでございます。あくまで、争う必要があれば境界確定訴訟という民事の争いをしていただくことになります。

 それから、職権の地積更正、地図訂正についてお尋ねがございましたけれども、これは、例えばAという土地がBという土地との間で筆界がこれによって決まるということになりましたら、もちろん、当事者は申請して地積更正や地図訂正を行うのが通常の例でございます。ただ、もちろん、全体として見て、例えば、AとBとのほかに、Aという土地はC、D、E、いろいろな土地に囲まれております。そういう土地との間ですべて筆界がもう間違いないということであれば、これは職権でもそういう地図訂正をする扱いになろうというふうに考えております。

○中村(哲)委員

 大臣にお聞きいただきたいんですけれども、今の答弁でわかってきたことは、特定というものは行政処分ではないけれども、結局、特定された境界、筆界を利用して職権で地積更正登記や地図訂正を行うことがあるわけですから、これは国民をある種の意味では拘束しているんですよ。だけれども、特定ということでなくて確定という行政処分の手続にすると、その不服申し立ての方法としては抗告訴訟しかなくなるので、だから、やはり最終的に裁判所で手続が保障されて確定する方がいいだろうということで確定訴訟というのは残したというのが今回の法律の大きなスキームだというふうにこっちは認識せざるを得ないんですね。一言、それでいいのかということをお答えいただけるのであれば、大臣または副大臣、お答えいただきたいと思います。

 と申しますのは、先ほど山内委員の話にもありましたけれども、第百四十八条には筆界確定訴訟との関係が記されているわけです。だからこのように申し上げているわけですが、今私の申し上げた理解でいいのかどうか、お答えください。

○滝副大臣

 中村委員が今整理されたとおりだと私は思っております。

 要するに、これを行政処分としてしまいますと、むだなというか、いろいろな訴訟を起こしていかなきゃいけないという手間がそれだけ重なるという問題がございますので、これは処分じゃない、そういうような構成にいたしているというのは私はそのとおりだと思っております。

 それから、周辺が固まってくれば、これはもともと職権で確定するということもあるわけでございますけれども、今は法律にそういう手続がないものですから、なかなか具体的には進展しないという問題がございます。したがって、これによって周辺が固まってくれば当然職権で確定できる部分が出てくるというのも、お考えのとおりだというふうに思っております。

○中村(哲)委員

 だんだんと整理されてまいりましたので、さらに進んだお尋ねをいたします。

 この新しい手続というのは、単なる筆界の特定であって、しかも、なお特定に至らない場合も想定しているということでございます。それであるのであれば、表示の登記における地積更正の登記や地図訂正の申し出における土地家屋調査士による筆界の確認の過程、申請を受けた登記官の審査による筆界の認定と何ら変わりがないのではないでしょうか。つまり、通常の表示に関する登記における筆界の確認、特定、認定とこの制度はどのような違いがあるのか、御説明をいただきたいと思います。

○寺田政府参考人

 通常の表示登記における認定というのは、基本的には、この申請代理人であります、通常はこれは土地家屋調査士さんでございますが、土地家屋調査士さんがお決めになったものを登記所に報告なさる、こういう性格のものでございます。

 それに対しましてこちらは、それを、もともと紛争性が潜在的にあるということを前提にして、隣の方との間にどういういきさつがあってそういう紛争になったかということも踏まえた上で境界を確定する、しかし、その確定は裁判と違って、あくまで証明力を公的に、一義的につけるということでございます。

 通常の地積更正、地図訂正の場合には、そのような証明力というものがその行為自体にはありませんが、これは公的に第三者であります隣地の所有者を手続に関与させてそれを決めてしまうというわけでございますから、通常の地図訂正よりは強い手続ということになるわけでございます。

○中村(哲)委員

 時間もありますので、次に参ります。

 第百二十三条で、筆界の特定に関して、「その位置を特定することができないときは、その位置の範囲を特定すること」としているが、具体的にはどういう特定になるのでしょうか。また、「特定することができないとき」とはどういう場合なのでしょうか。また「その位置の範囲」はどのような形で公示されるのか。以上三点についてお答えください。

○寺田政府参考人

 これは非常に例外的な場合ということを想定いたしておりますけれども、先ほどから累次御説明申し上げますとおり、あくまで、これは裁判所のように形成的に線を引くのではなくて、既にあるはずの線というものを発見するという作用でございます。

 したがって、私ども、こういう手続で登記所が責任を持ってゆだねられておりますので、その手続の中ではできる限り一本の線を引く、それを筆界として認定するということにいたしたいとは思っておりますけれども、それでもどうしても、資料が散逸して全く関係者もいないということで、例えばAとBなのかあるいはAとCなのかがわからないという場合がございます。そういう場合には、このA、B、Cの範囲内のどこかのところに境界があるということを認定して手続を終える場合が全くないわけではない、そういう極めて例外的な場合についてこの規定は定めているわけでございます。

○中村(哲)委員

 時間もありません。次に参ります。

 手続についてお尋ねをいたします。申請人となることができるのは表題登記のある土地の所有者のみなのか。つまり、表題登記のない土地である水路や里道の管理者として自治体や国からの申請はできるのでしょうか。

○寺田政府参考人

 この土地の筆界というのは筆がある、つまり登記がされている土地の境ということを前提としているわけでございますので、そのおよそ筆がないものについてこの筆界確定手続をとることはないわけでございます。

 ただし、今委員が御指摘になられました水路でありますとか里道というものについても、一方は全く未登記の土地でありましても、他方は登記のある土地と接している場合には、それはその登記のある土地の筆界というふうに理解できるわけでございますので、そういう場合にはこの筆界確定手続をとれるということになります。

○中村(哲)委員

 時間が参りますので、最後にお聞きいたします。

 所有権界と筆界は直接に関連しております。紛争の解決には、所有権の紛争を同時に解決する必要があります。ADRとの連携は今後どのようにされていくのでしょうか。それとともに、十四条地図整備のためにも予算を民間ADRにもきちんとつけていく必要があるのではないかと私は考えておりますが、その点についていかにお考えでしょうか。

○寺田政府参考人

 これは大変重要なポイントでございます。

 この手続が純粋に筆界確定の手続となりまして、所有権の争いはあくまでこの手続のらち外というふうに仕切りをいたしました。しかし、たびたび御指摘になっておられますように、実際の紛争は背後に所有権の争いがあるわけでございます。それが極めて多いわけでございます。

 この関係では、例えば土地家屋調査士会が弁護士会と連携されまして、所有権の争いを含めた境界についての紛争についていわゆるADR、裁判外紛争解決手続について努力をされておられます。こういうところと連携をとることも非常に重要でございますので、そのようにさせていただきたいと思います。

 ただ、ADRにつきましては、このADRに限らず、あらゆるADRが民間活力ということを前提にいろいろされておられますので、私ども現段階では残念ながらこういうことについて国として資金を提供することは考えておりません。この点については、ADR全体の問題というふうにお考えいただきたいと思います。

○中村(哲)委員

 時間が参りましたので、いろいろまだ申し上げたいことはございますが、質問を終わります。ありがとうございました。


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