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2005年2月25日 
第162回国会 衆議院 予算委員会第5分科会
案件:平成十七年度一般会計予算、平成十七年度特別会計予算及び平成十七年度政府関係機関予算(厚生労働省所管)

[1]質疑内容   [2]質疑項目   [3]会議録抜粋


[1] 質疑内容(32分) 「日本の精神医療の在り方について」   

 予算委員会第五分科会は厚生労働分野の問題を扱っています。
 現在、地元では、心身喪失者等医療観察法に基づく新施設の設置について反対運動が起きていますが、これに関連し、日本の精神医療について審議を行いました。

 かつて日本の精神医療は、患者を地域から隔離し、病院に閉じこめるという対応をとっていました。その結果、日本ではろくな治療も行われないまま入院患者が増え続け、精神医療に投入される医療費は全体の5%程度にも関わらず、ベッド数は全体の25%を占めるという悲惨な状況にありました。 
こうした状況を踏まえ、大臣に対し、今後、精神医療が目指すべき方向について問いただしたところ、大臣からは、これまでの考え方を改め、精神医療の質的向上を図りつつ、患者の早期社会復帰を目指して、患者が地域で安心してくらせる体制を構築したいという回答がありました。

 しかし、それを実現するには様々な制度改革を実施する必要があります。
 例えば医療法では、一般病棟の場合、患者16人に対し医師を1人を確保することとなっています。しかし精神病院の場合、患者48人に対し医師を1人確保すれば良いこととなっています。また、看護師の比率も、一般病棟が患者3人に対し1人なのに対し、精神病院では患者4人に1人という扱いです。
 そもそも診療報酬についても、例えば精神医療の入院基本料は一般病棟より低く設定されています。精神医療に携わる医者は、普通の医者の年収より3割は少ないという話しもあります。制度が較差を容認している以上、一般医療並に精神医療を充実することは難しいのではないでしょうか。

 何故こうした差を設けているのか。厚生労働省に確認したところ、精神医療の場合、一般的には積極的には医療を必要としない、薬の投与を中心とした慢性患者であることから、必要な医者も、かかるコストも少なくて済むといった現状があるとのことでした。
 
 とはいえ、今後精神医療を充実させるのであれば、やはり、できるだけ一般病棟との扱いの差をなくし(要求基準をあげる)、基準に達していない病院には厳しいペナルティを課すことによって、悪い病院は淘汰していく必要があると思います。
    

[2] 質疑項目

精神医療の在り方

     ア 日本の今後の精神医療の在り方について尾辻厚生労働相の所見

     イ 一般病床及び精神病床における医師の配置基準の根拠

     ウ 精神病院及び国立病院において医師の配置基準を満たしている割合及び基準を満たしていない病院に対する診療報酬見直しの必要性

     エ 精神医療向上のための診療報酬点数及び医師・看護師の配置基準等見直しの必要性

     オ 全国統一的・高水準の精神鑑定のための厚生労働省及び国立大学病院の取組
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[3] 会議録抜粋 

○中村(哲)分科員

 おはようございます。民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 人格者の尾辻大臣や西副大臣にこのようなことを申し上げるのは非常に心苦しいんですが、自民党、公明党がおととし参議院で強行採決した心神喪失者等医療観察法の施行をことしに控えまして、各地で新施設に対する反対運動が起きています。私の選挙区においても、国立病院機構の松籟荘で同じような反対運動が起きております。まさに、私たち民主党が主張してきたとおり、新法により精神障害者に対する差別や偏見が助長されてきている、そういった残念な結果になっています。

 この差別や偏見の社会的な背景には、精神病者を地域から隔離していくというかつての精神医療政策の誤りがあったと私は感じているところでございます。医療観察法に基づく問題というのは、対症療法も必要なんですが、その根本的な解決は、この精神医療をどこに持っていくのかということを考えていかなくてはならない、私はそのように感じております。

 そこで、きょうは日本の精神医療についての方向性をお尋ねさせていただきたいと思います。

 まず、大臣、今後の日本の精神医療はどのような方向に持っていくべきだとお考えでしょうか。

○尾辻国務大臣

 我が国の精神医療を振り返りますと、今お話しのように、歴史的に、入院処遇を中心にして施策が講じられてきた、とにかく入院してもらおう、そういう考え方で来たという経緯があることはそのとおりでございます。そこで、最近、それではよくないということで、精神医療の質的向上も図らなければいけませんし、特に早期社会復帰をしていただこう、そういう方向で考えなければいけないという方向転換が図られてきました。しかし、まだその成果が十分であるとは言えません。

 こんな現状を踏まえますと、今後の精神医療につきましては、今申し上げましたように、入院医療中心から地域生活中心へ、この基本的な考え方に基づいて、精神医療の質的向上も図りつつ、入院患者の皆さんにできるだけ早期に退院を実現して、地域生活に移行できる体制を構築することが必要だ、基本的にまずそう考えております。

 このために、患者の病状等に応じてより適切な医療が行われるための精神医療の改革、それから障害者も地域で安心して暮らせるための地域生活支援の強化、今お話しになりましたけれども、精神疾患や精神障害者に対する国民の理解を深めるといったような取り組みを総合的に進めて、精神医療のさらなる質の向上を図る必要がある、こういうふうに考えております。

○中村(哲)分科員

 今大臣がおっしゃった方向でぜひ進めていただきたいと思います。総論はいいんですけれども、各論に入ってくるとなかなかこれが、果たして今大臣がおっしゃったとおりに進んでいるのかなということが課題になってくると思います。

 具体的に少しお話をさせていただきたいと思います。ここからは西副大臣とのお話になるというふうに思います。

 まず、医療法の人員配置では、一般病院の場合は入院患者十六名に対して医師一名となっております。また、これは大学病院や救急の場合でも同じような基準になっているというふうに、精神病院においても、聞いております。しかし、一般の精神病院においては、入院患者四十八名に対して医師一名となっております、この差、十六対一というのと四十八対一というのはなぜなのか。

 これは、現場のお医者さんにお聞きしたところ、精神科の治療というのは薬を中心に行う、そして薬が脳内に届くというのにはかなり時間がかかる、ブラッドブレーン・バリアというそうですけれども、脳が化学物質を受け入れない、そういったバリアがある、そういうお話でした。そのために、薬はある程度飲んでいかないと脳に届かない、そして治療効果があらわれない、そういったことが言われておるので、いわば日にち薬的な要素が精神医療にある、だから差があるんですという話は現場のお医者さんからお聞きいたしました。

 しかし、なぜ十六対一と四十八対一、三分の一なのかなと。そこの具体的な根拠は何なのか、その理由をお聞かせください。

○西副大臣

 障害者施策の中でもとりわけおくれているという精神障害者の問題についてお取り上げをいただいて、感謝をいたします。

 お尋ねの配置基準の件ですが、一般的には、精神障害者の多くが、御指摘のように積極的には医療を必要としない、お薬を中心とした慢性患者である、こういうふうな理由で、一般病床と比較して緩やかな標準数というふうになっているということでございます。

 平成十二年に第四次の医療法の改正が行われまして、そのときに、精神病床におけるお医者さんの数の標準が決められました。大学の附属病院、それからもう一つは、内科、外科、産婦人科、眼科等の百床以上の病床を有する大規模な病院の中に精神病床がある、こういう場合につきましては、精神病の症状だけではなくて合併症状を持つという患者さんもおられるだろう、こういうことで、医療を提供する標準を、一般病床と同様の水準を確保するという意味で、十六人というふうに決めさせていただきました。

 したがって、それ以外の精神病床につきましては、精神医療に求められるニーズそれから整備の状況、それから医療資源の量を踏まえまして、四十八人ということに決めているところでございます。

    〔主査退席、根本主査代理着席〕

○中村(哲)分科員

 私は、十六対一、四十八対一、三分の一なのはなぜかという理由で、結局理由としてお答えになったのは最後の、文章でしたら一行分ぐらいの話で、そこを本当は詳しく聞いていかないといけないんですけれども、それと関連する話として、では果たしてその四十八対一は全部、日本全国守られているのかな、そういう話とあわせて四十八対一が適切なのかというのは考えていかないといけないわけです。

 それでは、この四十八対一という基準を満たしていない病院はたくさんあると私は聞いているんですが、全国で、満たしている病院は全体の何割なんでしょうか。また、国立病院の場合は何割満たしているんでしょうか。

○西副大臣

 先ほどの四十八人の件について、若干個人的な所感も申し上げたいと思うのですが、実は私の母親も同じ精神症状がございました、もう亡くなりましたけれども。精神病床にいるんですが、乳がんの手術をしまして、そのときには大学病院の精神病棟に入らせていただいて、私も一緒に行ったのですが、随分御厄介をかけるという意味で、大規模な病院の中に附属する精神病床というのはそういう役割も大いに果たしていただいているんだろうなと思って、そういう実感を私自身も持っているところでございます。四十八人とは関係ありませんが、十六人にしているという意味では、それなりの大変大切な役割を果たしているというふうに申し上げたいと思います。

 お尋ねの件でございますが、平成十五年度の医療法第二十五条に基づく立入検査がございまして、そのときには、約九割の精神病院において医師の配置標準が一応満たされているというふうに聞いております。

 なお、国立病院につきましては、同じく十五年十月の調査によると、すべての精神特例承認施設において医師の配置基準はすべて満たされているというふうに報告を受けております。

○中村(哲)分科員

 結局三分の一の理由というのはお答えになっていないのですけれども、今御報告があった、全体の九割の病院で基準を満たしている、国立病院の場合は一〇〇%満たしているというお話でございました。それは、昨年十二月二十日に出された「医療法第二十五条に基づく立入検査結果(平成十五年)について」、そういう資料であると思います。

 そこで、私が気になっているのは、派生な質問ですからお答えになれなければなれないとおっしゃっていただいて結構なのですけれども、北海道や東北の場合は十五年度の場合六八・四%、十四年度の場合は六五・九%。確かに一年間で二・五%のポイントは改善しているのですけれども、全国の横並びで見た場合に、突出して北海道、東北というのは数字が低い状態になっているわけなのですね。だから、そこもあわせて四十八対一や十六対一というのを考えていく必要があるのじゃないか。何のために十六対一、何のために四十八対一なのか、そこを、こういった地域の状況もあわせて考えていかないといけない、私はそのように考えておるのですが、もしお答えになれたらで結構ですけれども、西副大臣、どのようにお考えでしょうか。今後検討しますということでも結構ですから、お答えください。

○西副大臣

 ちょっと今御指摘の表を拝見いたしますと、確かに極端に北海道、東北は低いということで、今、実は初めて確認をさせていただきました。

 現状については、全国大体九〇%程度いくところが多い中で、どうしてこういうふうに極端に少ないのかということの原因は、私もにわかには承知しておりません。確認を早速させていただきたいと思っております。

○中村(哲)分科員

 実際、現場のお医者さんの話を聞くと、実際は六割ぐらいしか達成していないよとか、国立病院でもいっぱいこの基準を達成していないところがあるんだよと、実はこの調査自体が正しいのかどうかという疑問が現場のお医者さんから出されていたりするのです。だから、これはでも厚生労働省の皆さんの仕事を疑うわけにはいきませんから、どうなのかなとは思うのですけれども、そこも実は大きな問題であるということを御指摘だけさせていただきたいと思います。

 それでは、四十八対一、今、基準として仮に定められているわけですから、ここを守れないような基準のところというのは何らかのペナルティーを科すなどして、ここに一日も早くたどり着いていく、そういった何らかの仕組み、例えば診療報酬を、九割しか人員が配置できていないのだったら九割に減らす、八割だったら八割、やはりサービス量がそれだけ低下するところには比例して診療報酬を落とすべきではないかなと私は思うのですが、実際、医療保険の方はそうなっていなくて、サービス量が低いけれども、例えば六割減ったとしても報酬は六割までは減らない、そういう話になっているのですけれども、その点はいかがお考えでしょうか。

○西副大臣

 御指摘の件、入院の基本料について申し上げますと、これは実は、お医者さんの標準の数と、それから看護師さんの標準の数、これは双方を縦横に、それぞれの充足率を基準にして、先生がおっしゃるような評価をある程度いたしております。その双方が相互に、医療法で定める標準数を一定程度欠いている、こういう場合には、その程度に応じた減額措置を適用しているところでございます。

 医療法に基づいて立入検査をした結果によれば、精神病院における医療法で定める標準数、先ほどの標準数でございますが、おかげさまで、若干でございますが充足率は向上しておりまして、先ほど申し上げましたように統計上九割という、先生、これ自身に疑義があると言われれば、ちょっとそのことはさておくとして、九割というところまでいっておりますが、この充足率を入院の基本料というものに反映させているということが、ある意味では充足率の向上に有効に作用しているというふうに考えているところでございます。

○中村(哲)分科員

 今の御答弁、私もきのうの質問取りのときに、これ、どう答えましょうと。いや、どう答えましょうと言われても、こう答えたらいいんじゃないですかという御提案をさせていただいたんですが。

 では、それならちょっと数の話をさせていただいて、今、お医者さんの数と看護師さんの数と双方でとおっしゃいましたので、例えば、お医者さんが七割、看護師さんが七割などのケースにおいては医療報酬は何割カットされるのか、それについて具体的な数字をひとつお答えください。

○西副大臣

 済みません、具体的なところの準備はできていなかったものですから。

 八〇%までが一応それぞれについて合格ライン、最低の合格ラインということでございまして、お医者さんも七〇%、それから看護師さんも七〇%の充足率ということになりますと、一二%の減額というのが今の仕組みでございます。

○中村(哲)分科員

 私が申し上げたいのは、医療サービスが七割程度しかないのに報酬は八八%払っていいんですかという話なんです。

 そして、八〇%でも一〇〇%の数をクリアしているのと同じことになるというふうにおっしゃいましたから、四十八対一を八掛けしてみてくださいよ。何人になるんですかね。約二割アップぐらいはいいわけですよね。だから、六十対一ぐらいでも大丈夫という話になるわけです。果たしてそれでいいのかなと。そのペナルティーのかけ方というのはそれでいいのか。

 だから、六十対一で精神医療がきちっと全うできるというふうにお考えなのであれば、一〇〇%合格ということで保険医療の診療報酬をお支払いになってもいいと思うのですけれども、それでは六十対一というのはどういう医療水準なのかということを、今後厚生労働省の中で検討していく必要があると思うのですね。四十八対一と十六対一を比べるときに、それでは、実は保険医療では六十対一まで許されるんだというところも含めて検討していただかなくてはならないということを御指摘させていただきたいと思います。

○西副大臣

 実は、病床数が多い場合ですとパーセントは余りきいてこないのですが、一人が多いか少ないかによってがたっと落ちたりという、いろいろなケースがありまして、私も正直、若干緩いんじゃないかという、個人的には思ったところです、これを見せていただいて。

 ただし、私のぱっとした印象ですので、省内といいますか、またいろいろな関係のところで御議論があるかと思いますが、とりあえず印象だけ申し上げたいと思います。

○中村(哲)分科員

 大臣、今の具体的な議論を一つお聞きいただいたんですけれども、結局、その基準や、また、基準に合わせたお金の問題がやはり出てきます。

 今よく聞く話として、精神医療の向上のためには、ほかの医療と比べて低いと言われている精神医療の診療報酬を、少なくともほかの医療並みには引き上げるべきなんじゃないか、そういうお話をよく聞くんですけれども、その点については、大臣、いかがお考えでしょうか。

○尾辻国務大臣

 入院基本料の話だと思いますので、お答えいたします。

 まず、そもそも入院基本料はということを申し上げなきゃいけないんですが、ちょっとかたく言いますと、療養環境の提供、看護師等の確保及び医学的管理の確保等の基本的な入院医療の体制を総合的に評価しておる、こういうことになるわけですが、今繰り返しておられるように、看護婦さん何人いるの、お医者さん何人いるの、そういうことを考えて入院基本料を定めています、こういうことであります。

 その中で、精神病棟の入院基本料は一般病棟よりも低く設定されておる、そのとおりなんですが、これはもう今まさに先生が御指摘のとおりに、お医者さんの数なんかが少ない、だから、お医者さんの数が少ないんだから入院基本料は少なくていいんじゃないの、こういう考え方で少なくなっておるわけでございます。あとは、それでいいかどうかという今後の議論だと思いますので、きょうの先生の御議論なども大いに参考にさせていただいて、今後、我々検討したい、こういうふうに思います。

○中村(哲)分科員

 かなり前向きな発言をいただきまして、ありがとうございます。

 ベッド数でいうと、精神医療は全体の医療の約四分の一、二五%を占めていると言われております。しかしながら、医療費については五%ぐらいしかかけていない、そういった確実なデータがあるわけですね。お医者さんの話を聞くと、いや、僕もね、家を引き継がぬとあかんかったから精神科をやったけれども、これは金のことを考えたらばからしくてやっていられないよと。金のことだけではなくて、やはり社会的な偏見、差別も強い領域ですから、ある程度使命感を持ってやらないとできない部分もあるんですよね。

 そこで、使命感を持っているけれども、やはりここまで差がついてしまったら、年収は大体三割ぐらいは少ないというふうにお医者さんの話を聞いておりますので、そういう実態があるのかどうか。きょうは質問通告していませんでしたから、お医者さんの給料の話は調査をまだされていないと思うんですけれども、現実、精神科のドクターの意見を聞いていただきたいな、勤務している上で何か不都合なことがないのかな、そういったヒアリングをぜひ省としてしていただければと思います。

 それから、もう少し具体的な話を、これは大臣にぜひしていただきたいんですけれども、お医者さんの数は先ほどの話で基本的に考えられておるんですが、看護スタッフの場合は、先ほど言った薬の関係とはまた違う要素が出てきます。看護が必要、手間をかけなければいけないということであると、これは一般の病床と同じような基準にすべきなんじゃないかな、私はそのように考えているんですが、実は、今、精神医療の場合は看護師さん等のスタッフは四対一になっています。これは、普通の病院では三対一ですので、若干設置基準が低いのが精神医療になっています。

 手はそんなに、同じようにかかるんじゃないかなと思うんですが、ここはやはり三対一に引き上げていくということが必要だと考えるんですが、大臣、いかがお考えでしょうか。

○尾辻国務大臣

 まず、申し上げますけれども、平成十二年に第四次医療法の改正を行いました。この改正でどういうことを決めたかというと、大学病院とか、それから大きな病院と一言で申し上げておきますけれども、百床以上の病院というふうに考えていただいてもいいんですが、そういうところの精神病床については、合併症を持つ患者に対して医療を提供する機能なども考えなきゃいけませんから、一般病床と同様の水準を確保するために、今おっしゃった三人に対して一人と同じにしていますということをまず申し上げました。そのときに、それ以外のところに対しては、六人に一人だったのを四人に一人にせめて改善、改善というか数字を上げましたというふうに、今、まず現状を申し上げたところであります。

 ただ、四対一であるということの事実は御指摘のとおりでありますから、今後、また医療法の改正も続いていきますから、そうした中で精神病床における人員配置についても検討してまいりたいと考えております。

○中村(哲)分科員

 ありがとうございます。

 一冊、本を紹介させていただきたいと思います。講談社から出ております、野村進著「救急精神病棟」、そういう本があります。その三百四十五ページにこういう記述があります。少し読ませていただきたいと思います。「「慢性精神病患者は病院の固定資産」 こんな守銭奴の極みのような言葉が、病院経営者のあいだでは公然と語られ、患者をなるべく長く入院させて「抱え込んだほうが儲かる」という、医の世界にあるまじき思惑が広がっていく。」このような記述であります。

 今、精神病院は古い病院もたくさんあります。精神病院というのは、非常に、社会的入院で退院が難しい、そういうことがありますので、結局、入ってしまったらその病院から動かないわけですよね。ずっとそこにいさせられる。

 よく聞く話として、これは厚生労働省は、そんなことありません、絶対ありませんとおっしゃるんですけれども、畳敷きのところに五十人まとめて寝かされている、そういうのを本当にないと言えるんですか。ありません、ありませんとおっしゃるんですけれども、いや、おれ知ってるよという声も聞くわけですよね。

 実際、本当にないのかということを考えると、やはり、清潔な病院であれば僕は古いも新しいもないと思うんですけれども、古い病院は古いなりの病院である可能性もあるわけですよね。医療法においては、古い病院では一人当たり四・三平米でいい、新しい病院では六・四平米必要ですよということが決められているらしいんです。建てかえというのは簡単にできませんから、そういう基準もあるのかなと思うんですが、一定程度前向きな努力をしていって、患者さんのクオリティー・オブ・ライフ、療養環境を整えようとしている病院には、何らかのインセンティブを与える必要があるんじゃないかなと。

 まあ、それは考え方ですから、必ずしもそうとは言えないかもしれない。利益誘導につながっていってもいけませんし、ここは難しい話なんですけれども、少なくとも雑魚寝でとかいうような異常な状態がないようにはしないといけない。すごいピンからキリまで環境が違うと思うので、そこを少なくともちょっと緩和していくというか、そういった努力が、だから、これはお医者さんの数と看護婦さんの数とかとまた違うレベルの話ですから、別の取り組みが必要だと思うんですよ。その点について、大臣、いかがお考えでしょうか。

○尾辻国務大臣

 先ほども、気になりましたから、私も、本当にないなと言いました。

 そのときに説明をしてくれた説明をそのまま言いますと、少なくとも昔みたいにがばっと畳の部屋に詰め込んでいるという状況はない、これはありませんと。ただ、畳の部屋の方がいいという患者さんもいたりするので、畳の部屋が残っていることは事実で、また、その畳の部屋に何人かの人がいるというのは、部屋があることは、これは事実だというふうに言っておりました。

 ただ、そうしたものをだんだん改善、そうしたものというのは、畳の部屋がいいという人が畳の部屋にいるということは悪いことじゃありませんけれども、大人数の部屋をつくるということはよくありませんし、改善をしていかなきゃいかぬ、こういうふうに思っております。

○中村(哲)分科員

 もう時間が少なくなってまいりましたので、最後の論点に入らせていただきたいと思います。

 医療観察法ができた背景というのは、池田小学校事件があったと言われております。しかし、この池田小学校の事件の宅間死刑囚のケースというのは、医療観察法が施行されてもこの件は再発は防止できません。再発の防止は、やはり鑑定、簡易鑑定で詐病が見抜けなかった、そういった状況を改善していくような国としての取り組みが必要である。これは本質的にはそうであるということは、皆さん、本音ではもう理解していただいていると思うんです。

 そこで、きょうは、最後に、塩谷文科副大臣にも来ていただいておりまして、その話をあわせてお聞きさせていただきたいと思います。

 この鑑定ということを、やはり公正に、どこに行っても、全国どこで起きる事件であっても同じような鑑定が受けられるような、そういった司法精神医学の研究、そして、実際にその鑑定をするための意見を述べられるようなセンターを、私は厚生労働省が中心となってつくるべきだと考えております。この点について大臣にお聞きしたいのと、塩谷文科副大臣には、こういった動きが大学病院の中で起きていると聞いております。大学病院の中でそのセンターをつくろうとしている動きに対して、文科省としてどのようにお考えになっているのか、その点についてお聞かせください。

○西副大臣

 今お尋ねの、我が国の司法精神医学のレベルアップの件についてでございますが、これは、先ほど御指摘の刑事責任能力の鑑定という大変重要な面も当然のことながら、我々これから進めようとしております、患者さんの病院から地域という流れ、それからさらには新しい治療法という意味でも大変先進的な精神医療が求められるという意味でも、大事なことだというふうに考えております。

 そのために、平成十五年の十月に、省内の国立精神・神経センターの精神保健研究所というのがございまして、その中に新たに司法精神医学研究部というものを設置いたしました。この中では、臨床、疫学、社会学、心理学などを合わせた総合的な観点から、例えば裁判所における鑑定事例を収集しそれをデータベース化するという方法など、精神鑑定のあり方に対する研究を進めているところでございます。

 今後、これらの研究成果の蓄積を通じて、刑事責任能力の鑑定の標準化、それから鑑定の質の向上、これを含めて、司法精神医学の充実のために全力で頑張ってまいりたい、こう思っております。

○塩谷副大臣

 お答え申し上げます。

 今委員お話しのとおり、二〇〇三年七月に心神喪失者等医療観察法が制定され、これら心神喪失者等に対する鑑定や入院による治療は、適切な社会復帰の推進等に携わる人材育成が急務になっているところでございまして、これらの心神喪失者に対する適切な診断、治療方法等について教育研究を行う司法精神医学の分野の充実は大変重要であると認識しているところでございます。

 こういう中で、国立大学法人千葉大学においては、社会精神保健教育研究センターを設置して、精神障害者や心身喪失者等の重大犯罪の診断、処遇判定、治療、社会復帰などの司法精神医学に携わる人材の育成を図ること等を予定しておりまして、この十七年の予算にもその計上をしているところでございます。

 我が文科省としても、今後、このような各大学における社会的重要課題に対した教育研究の取り組みについて必要な支援をしてまいりたいと思っているところでございます。

 以上でございます。

○中村(哲)分科員 時間が参りました。

 今の両大臣の御答弁というのは、まず研究をしっかりしていくということだというふうに実感しております。その後にはしかし、やはり鑑定そのものをしっかりしていくという、次の段階に入っていかないといけない、そのことも指摘させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。



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