2000年11月6日
第150回国会 衆議院 内閣委員会商工委員会逓信委員会連合審査会

案件:高度情報通信ネットワーク社会形成基本法案


会議録抜粋

○中村(哲)委員

 民主党の中村哲治です。
 まず、障害者、病人に対する配慮についてお聞きいたします。
 いわゆるデジタルデバイドの是正のため、第八条では、身体的な条件による格差の是正について規定しています。

 そこで、確認なのですけれども、第十七条や三十四条二項三号の教育及び学習の振興には、当然、障害者や病人に対する訓練や指導というものが含まれると考えているのですけれども、いかがでしょうか。

○堺屋国務大臣


 御指摘のとおり、第八条の情報格差の是正は、十五条以下に規定されている施策の基本方針のそれぞれについて横断的に推進するものとして、基本理念を盛り込んだものでございます。

 具体的に申しますと、身障者などに対する格差の是正につきましても、御指摘のとおり、教育及び学習の振興にも含まれておりますが、情報バリアフリー機器の研究開発、視覚障害者に配慮した音声転換ソフトの官庁ホームページの対応等研究開発、コンテンツの充実、行政、公共分野の情報化等さまざまな分野にこのバリアフリーの問題は含まれております。

 今申し上げましたことは、重点計画の各項目についても同様でございまして、さらに、三十四条の二項七号の規定に基づき、情報格差の是正にかかわる施策を重点的に盛り込むことも可能でございます。

○中村(哲)委員

 次に、重点計画についてお聞きいたします。
 基本法の第三条から八条が定める基本理念は、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が作成する重点計画によって具体化される、そういうふうに認識しております。そして、具体化された重点計画がこの国を大きく動かしていくと考えておりますけれども、その認識でよろしいのでしょうか。

○堺屋国務大臣

 まさにそのとおりでございまして、この法律に定めます重点計画は、本法案の基本理念や基本方針にのっとって、高度情報通信ネットワークの形成、人材の育成、電子商取引の促進あるいは電子政府、行政の情報化等について、政府が迅速かつ重点的に実施すべき具体的な施策の内容を定めるものでございます。

 さらに、重点計画には、原則として、当該施策の具体的な目標あるいはそれを達成する期間等も定めますので、具体的な施策が定められることになっておりますから、政府としては、この重点計画を中心として今後のIT施策を推進していくことになると考えております。

○中村(哲)委員

 御答弁を伺いまして、重点計画は非常に重要である、そういうふうに認識いたしました。
 重点計画が、IT社会をつくっていくために本当に重要な役割を果たしている、そういうふうに考えるのであれば、その作成の過程に、今この法律では国会の関与がありませんけれども、国会の審議や承認というものがこの法律には欠けていると思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

○堺屋国務大臣

 重点計画でございますが、政府の最高責任者でございます内閣総理大臣を本部長として、各行政事務を担当いたします所管の閣僚と、高度の情報通信ネットワーク社会の形成にすぐれた見識を持っている民間人等から成る高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が、責任を持って行うことになっております。

 もちろん、この重点計画の中で、法律事項、法律を改正するとか作成するとかあるいは予算という面では、国会の御審議をいただきまして承認することが必要になっておりますので、当然、その段階で、予算あるいは法令の審議の形で国会の審議をいただくことになります。

○中村(哲)委員

 それでは、基本法は附則で来年の一月六日を施行期日としておりますけれども、IT戦略本部は施行後どれぐらいの期間で重点計画を策定すると考えたらよろしいのでしょうか。

○堺屋国務大臣

 重点計画は、本法案の定めます基本理念、基本方針にのっとって、高度情報通信ネットワークの形成、人材の育成、電子商取引の促進あるいは電子政府、行政の情報化等、政府が迅速かつ重点的に実施する具体的な政策を定めたものでございます。

 したがいまして、その策定の期日については、この法律が施行されます来年一月六日に設置される高度情報通信ネットワーク社会推進本部において決定されることになっております。この法律の趣旨にかんがみますれば、これはできるだけ早くとしか申し上げられません。何月何日ということは今の段階では申し上げられませんが、この法律の趣旨に従ってできるだけ迅速に行うということになります。

○中村(哲)委員

 大臣、三十四条六項は重点計画の変更を想定しています。私は、この重点計画はどれぐらいの期間で見直されるのか、そういうふうなことも念頭に置いてこの法律はつくられていると思います。だから、先ほどお聞きしました重点計画の作成ができるだけ迅速に、早くという答弁では、国民側としては、どれぐらいのタームでのことを考えているのかなかなか伝わってこないと思います。

 大臣の個人的なお考えで結構ですから、どれぐらいの期間でなされるべきものか、一カ月なのか二カ月なのか三カ月なのか、そのあたりのことをお答えいただければ幸いです。

○堺屋国務大臣

 何しろ、IT技術というのはドッグイヤーと言われるぐらい回転が速いものでございますから、そうそう長くかかっているわけにはいかないだろうと思います。恐らく、これが一月六日に発足いたしますと、二、三カ月とか数カ月の間には考えなきゃいけないだろうと思いますし、またその時々に応じて変更ということも考えていきますと、かなり早い段階で概要、重点計画はお示ししなければならない。

 これから新しい組織をつくるわけですから決定的なことは申せませんけれども、私の個人的な考えでいいますと、三カ月ぐらいのうちには定めなきゃいけないのではないかと思っております。

○中村(哲)委員


 重点計画で定める施策については、三十四条三項、五項により、その具体的な目標の達成状況を適時に公表しなければならない旨の規定があります。この適時にとはどれくらいの期間を想定しているのでしょうか。

○堺屋国務大臣

 これも今の段階で何カ月に一回と明確に言うことはできませんが、当該施策の具体的な目標値を定めて、その達成期間を置きます。したがいまして、その目標の達成状況を調査いたしまして適時発表するということになっておりまして、私の感じとしては、それぞれの項目というのじゃなしに、全体のどこかという意味でございますと、やはり年に数回は、こういうぐあいになった、こういうぐあいになったというような発表をさせていただくのが適切だと思っております。

○中村(哲)委員


 かなり具体的なイメージがわいてきましたけれども、IT戦略本部の会合自体は何日に一遍ぐらい開かれるというふうなイメージを持てばよろしいでしょうか。

○堺屋国務大臣

 正式な本部会合ということになりますと、本部長が総理大臣でございますから、総理大臣の出席というようになりますと、多いときには月に二回、あるいは月に一回ということになるでしょうが、もう少し、しょっちゅう会うという意味では、IT担当大臣を中心といたしまして、少なくとも二週間に一回、普通は月に三回ぐらいの会合は開かれる。もちろん、事務レベル、そういうのは毎日のように行われる。

 特に、委員御指摘のこの重点政策を決定するような時期でございますと、かなり頻繁に行われなければならない。そのときによって違うでしょうけれども、かなり頻繁に行われるというような形になろうかと思います。

○中村(哲)委員


 次に、いわゆる電子政府についてお聞きいたします。
 第十九条「行政の情報化」、第二十条「公共分野における情報通信技術の活用」に共通する必要な措置として、情報の集積体であるいわゆるサーバーをどこに置くのかということがセキュリティー上非常に重要だと考えます。なぜならば、地震等の物理的な破壊、そしてサイバーテロなどの電子的な破壊というようなサーバーの破壊をやはり想定していく必要があると考えるからです。

 特に危惧しておるのが、今、日本のインターネットは東京に集中しております。この東京への一極集中に関して、もし危機管理を考えるのであれば、それに対する備えをしておかなければなりません。

 私は、三十四条二項五号の、重点計画で定める場合には、メーンのサーバーが破壊された場合に備えて、常にメーンのサーバーのバックアップをとっているサーバーをメーンのサーバーが置かれている場所と物理的に離れたところに設置すべきだと考えておるのですけれども、その点、いかがでしょうか。

○堺屋国務大臣


 この点も委員御指摘のとおりでございまして、政府といたしましては、安全で信頼できるネットワーク社会の基盤をつくるために、官民一体となってこのセキュリティーの問題を考えなければならないと思っています。
 その一つはハッカー対策でございますが、もう一つは、今御指摘になりましたような物理的な地震あるいはテロ行為、そういったものに対する対応でございます。

 現在のところ、これも委員御指摘のとおりでございまして、東京の大手町あたりにかなり集中しているということがございます。それで、その安全を確保するために、できるだけ迂回路をつくり、分散をするというようなことも政府として考えているところでございまして、この七月に全省庁でセキュリティー水準を向上させるための「情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」というのを作成したところでございますが、それでは、情報システムの設置場所あるいは物理的な対策についても具体的な項目を定めるべきことを示しております。

 各省庁のガイドラインを踏まえて、年内を目途に、災害、不正アクセスの脅威から政府の情報システムを防御するためのセキュリティーポリシーの策定に取り組んでいるところと承知しております。
 なお、重点計画には、高度情報通信ネットワークの安全性及び信頼性の確保に関しまして、政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策に盛り込むこととされておりまして、具体的には、御指摘の点も踏まえまして、新たに設置される戦略本部で検討していきたいと思っております。

○中村(哲)委員

 では、物理的な、離れた場所でのバックアップというのは検討されると考えてよろしいのでしょうか。

○堺屋国務大臣

 検討しております。

○中村(哲)委員

 それでは次に、情報化と家計への影響についてお聞きいたします。
 携帯電話の普及によって、国民の消費傾向が変化していると言われています。この数年で家計に占める情報通信費の割合はどんどんふえてきているのではないかというのが、私がいろいろな人とお話ししたときの感触であります。一九九四年と一九九九年を比べた場合、これは五年間でという意味ですけれども、家計に占める情報通信費の割合はどのように変化したのでしょうか。

○堺屋国務大臣

 総務庁の家計調査というのがございますが、これで見ますと、情報関連支出の増加に伴い、情報関連支出の消費全体に占める割合は、一九九四年に二・二%でございましたが、九九年には三・三%に上昇しております。特にその中で、電話通信料金というのだけ見ますと、一・六%から二・三%に上昇しているということでございます。この情報関連支出には、電話通信料、それから通信機器、パソコン、ワープロ、放送受信料、そんなものが含まれております。

○中村(哲)委員

 私は、IT革命の推進が、皮肉にも家計を圧迫するような状況になってきているのではないかと思えてなりません。教育費とともに、娘の携帯電話代を見るために私はパートに出なくてはいけないのです、どうにかしてくださいと、この間も言われました。

 個人消費はもはや経済の六割を占めています。経済全体に与える影響を考えると、やはり家計に占める情報通信費の割合がふえると、他の産業分野の消費を減らすことにならないかと危惧するのですけれども、その点に対して御所見をお伺いしたいのです。

○堺屋国務大臣

 それは確かにそういうところがございまして、IT化が進展いたしますと、家計の情報関連支出の割合がふえまして、家計は、利便性が増しますけれども、それだけほかのものが減らされるというような傾向は確かにあるようでございます。

 よく言われるのは、少年、特に高校、大学生向けの漫画雑誌とか、あるいはファッション雑誌とか、ファッションとか、そういったものが最近どうも売れ行きがよくない。その原因はお小遣いが携帯電話に食われているからだというようなことも言われております。

 九九年度で見ますと、全体の実質設備投資の中で、IT関係の設備投資が大変プラスに寄与しておりまして、また、名目消費支出全体がやや減少している。物価がちょっと下がっておりますから、名目消費支出は減少しておりますが、IT関係は下支えになっているというか、減っていないというような面がございます。だから、ITがはやってきたことで伸びている面と、やはりそれに食われて抑えられている面とが両方ある。

 これは、どの比率であるかというのはちょっと難しいのでございまして、今ちょうど先ほど申しました高校、大学生の人数が減っておるというようなこともございまして、必ずしもITが伸びたからほかが減ったとは限らずに、人数が減った影響もございますれば、所得、収入、物価の影響もありますが、やはり二・二%から三・三%に情報関係の支出がふえている分、ほかで減っているのは大なり小なりあるだろうと思われております。

○中村(哲)委員


 やはり重点計画を定める場合には、世界最高水準の高度情報通信ネットワーク形成の促進のためにも、家計に占める情報通信費の割合を配慮する必要があると考えるのですけれども、いかがでしょうか。

○堺屋国務大臣

 情報化社会がどんどん発展いたしますと、全体としてやはり情報通信にかかわる費用、家計も企業も含めてその費用は大なり小なりふえると思うのです。けれども、その反面で、今まで交通費を使って行っていたところが行かなくて済むようになる。あるいは、物価の安いものを探せるようになる。それによって、流通コストが下がって、より生産性が向上して、人々の買い求めるものの実質的な量がふえる。そういうことが起こってきて、全体としては利便性が高まると思います。

 この情報のコストをいかに下げていくか。これは日本にとって大変重要な問題なんですが、それはどんどんとやはり情報の利用量がふえることによって値段も下がる。だから、総量としての情報に支払われるお金は、費用はやはりふえるでしょう、だけれども、それによって得られる効果、それから利便性と楽しみに比べると、単価はずっと下がっていく。そういうような条件を、競争社会、IT分野での競争を激しくする、そして、それを利用した生産、流通を合理化する、そういった面で、全体として家計にも役立つようにしていかなければならない、こう思っております。

○中村(哲)委員

 重点計画に配慮していただけるということを確認して、次に参ります。
 大谷委員、山田委員もお聞きいたしましたけれども、雇用への影響についてお聞きいたします。

 IT革命の進展は、流通業で卸を不要にして、また中間管理職の存在を不要にする、いわゆる中抜きの現象を引き起こすと言われているのは、先ほどお話があったとおりです。IT革命が起こって失業者がふえてしまうというのでは、五条で言う「ゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現」は実現できないということになってしまうというふうに考えています。アメリカでも、四条や六条で言うような就業機会の増大はあったけれども、それはいわゆるチープジョブと言われる賃金の安い就業機会の増大であったのではないかと言われています。

 私は、この五条に言う「ゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現」を本当に実現させるためにも、基本法の中に「雇用の創出・増大」というふうな文字を明確に入れていく必要があると思うのですけれども、その点についていかがでしょうか。

○堺屋国務大臣


 御指摘のように、雇用は極めて大事なことでございますし、先ほど大谷委員からも御指摘がございましたように、中抜け現象というのも起こる可能性もありますし、現にアメリカで起こったこともございます。また、九二年から九三年に、アメリカで雇用がようやくふえ出す、一時ジョブレスリカバリーと言われる時代があって、タイムラグがあったのですが、ようやく雇用がふえ出したときにも、おっしゃるように、チープレーバーといいますか、今までの中間管理職がどちらかというとブルーカラーに近い方の職場に就職せざるを得ない、職業、収入の二極分化が起こるというようなこともございました。

 しかし、最近になりますと、IT革命がアメリカ社会全体に浸透してまいりまして、その結果、生産性も向上し、失業率もどんどん下がりまして、底辺の賃金もかなり上昇する、それに伴いまして中間職の賃金も上がっていくというような現象が見られています。

 よく言われることですが、知られた例といたしましては、電話交換手と自動交換機、電話の自動交換機ができたときに電話交換手という職業が減りましたけれども、電話が利用されることによってはるかに多くの職種が生まれて、それで雇用も盛んになり、産業も豊かになり、そして多くの人々の生活がよくなったということがしばしば指摘されておりますが、まさにこのITも、一時的にはそういう問題がございます。

 これに対しては、政府といたしましても、ミスマッチを解消するとか新しい技能を教育するとかいうような対策が必要でございますが、大きな流れとして見れば、これが新しい雇用を生み出し、新しい産業、創業を築きまして、より豊かであまねく恵沢が与えられるような、そんな社会になるものだと確信しております。

○中村(哲)委員

 私は、そのような意気込みを示されるのであればこそ、基本法の中に「雇用の増大・創出」という文字が明確に書かれる必要があるとお聞きしているのですけれども、いかがでしょうか。

○堺屋国務大臣

 この法案の中には、すべての国民があまねく恵沢を享受できるというように示しておりまして、そのあまねく受ける恵沢の中には、もちろん雇用の問題、そういう豊かさの問題も入っておりますから、あえてここで雇用だけを抽出して一条を立てるよりも、こういった書き方の方が適切ではないかという気がしております。

○中村(哲)委員

 最後に、技術者の養成についてお聞きいたします。
 十七条で、「専門的な知識又は技術を有する創造的な人材を育成するために必要な措置が講じられなければならない。」と規定してありますけれども、現場で活躍している技術者の人たちというのは、文系の人たちが意外に多いというふうにお聞きします。変化の早い通信業界のことですから、今はもう学校で学ぶことではついていけない状態に入っているというふうにお聞きしています。この点に対して、個人の自助努力に任せている現状をいかに変えていくのか、その点についてお聞きしたいのですけれども、よろしくお願いいたします。

○堺屋国務大臣

 先ほどの雇用の件につきましては、基本理念の四条及び六条に明確に雇用の増大についても書いております。

 また、今御質問のありました個人の生活といいますか職業といいますか、こういったものも、どのように変わるか、まだ議論のあるところでございますけれども、私は、規格大量生産の時代の終身雇用であったころから、より多くの情報を得て、より楽しみをともにする、好みをともにするような人々とのつながりが深くなっていくような、そういった社会が生まれてくるのじゃないか。そういう意味で、個人の生活あるいは人生観そのものが大きく変わってくるような気がしております。

○中村(哲)委員

 ありがとうございました。


関連しておりますので、引き続き民主党田並議員の質問を掲載します。



○小平委員長
 田並胤明君。

○田並委員

 今、我が党の中村議員が堺屋長官に質問をしましたけれども、例の雇用の増大という面について、第四条と第六条ですか、そこに、就業の機会の増大という、これが書いてあることによって、堺屋長官の方は、これでいいんだ、こういう説明でしたけれども、そうじゃなくて、先ほど中村委員が言ったのは、就業の機会の増大じゃなくて、雇用の拡大、増大を明確にここに文章化するべきじゃないか、こういう意味で言ったので、その辺取り違いをしてもらいたくない、こういうことで、まず申し上げておきたいと思います。

 それから、時間の関係がありますので、特に、このIT基本法の中で、私どもが読ませていただいて、若干欠けている部分があるのではないだろうかという点について、幾つか申し上げたいと思うのです。
 それは、IT革命が進展をすることによって、日本の民主主義がそれに伴ってさらに徹底をされる、そういう視点をまず一つは持つべきだということが第一点です。

 それともう一つは、今の雇用の問題、働く人たちの立場からして、単に、失業者がふえる、新しいITに関連をする雇用がふえる、そのことによってプラス・マイナスでプラスになる、そういう視点だけではなくて、雇用形態が変わりますから、恐らく非正規社員というのが減って、例えば、スモールオフィスだとかホームオフィスだとか、あるいは非正規社員であるパートタイマーだとか、こういうのが増大をして結果的に雇用者の数がふえたという形だけはできるかもしれませんが、非正規社員との間の賃金あるいはその他の労働条件、あるいは年金や医療、そういった面についての差が当然出てくるんじゃないだろうか、こういう気がしますので、その辺の視点を明確にする必要があるのじゃないだろうかということが二つ目です。

 それから三つ目は、国内的な情報通信のセキュリティーの問題はこの基本法の中にも出ておりますが、例えば、国際的なサイバーテロに対しての国際的な安全保障といいましょうか、この辺の国際協調の視点というのがこの中にあるのだろうかどうだろうか、こういう面についてお尋ねをしたいと思っております。
 第一点目の情報公開の問題ですが、先ほど申し上げましたように、IT革命がどんどん進むことによって高度情報通信社会が実現をする。当然、納税者である国民の皆さんが行政情報をさらに知る、こういうことができないと、せっかくIT革命が進んでも、納税者である国民の皆さんにとって果たしてどうなんだろうか。

 要するに、例えばアメリカなんかの場合は、納税者がそのお金を投入したところに対しての知る権利というのは当然あるんだ、こういうことで明らかにして、かなり数多くの、それこそ至れり尽くせりの情報が公開をされておりますし、それにIT革命がうまくマッチをして、まさに国民が知る権利がきちっと保障されている、こういう状態がつくられているというふうに思うのです。

 これらについて、堺屋長官は大変知識が豊富でありますから、来年の四月から我が国でも行政情報の公開法が施行になりますけれども、この中には、残念ながら、国民の知る権利というのが保障されていないのですよ。文章化されていないのです。法文化されていないのです。これは、この行政情報の公開法を審議する際にも、かなり野党の人たちが国民の知る権利というものをきちっと入れるべきだ、こういうことを強く主張したようですが、残念ながら、附帯決議の中でそれがうたわれているだけであって、そういうことは今後の検討課題だと。

 日本の場合には、IT革命の推進とあわせて、国民の知る権利である情報公開制度、それから行政評価の制度、これが進展をしていかないと、本当に国民のためのIT革命なんだろうか、こういう感じがいたします。ぜひ、その辺について、このIT革命と情報公開、そして行政評価制度、これらが両々相まって進展をするような方向に行かないと、本当の意味のIT革命の成功というのはないんじゃないだろうか。そのことが触れられておりませんので、この辺について基本的な立場をお聞かせ願いたい。

○堺屋国務大臣


 情報公開は大変重要なことでございますし、特に政府にとりまして、説明責任と申しましょうか、アカウンタビリティーというのは、今非常に大事なことになってきていると思います。

 委員御指摘のように、今後、来年四月には情報公開法が施行されることになっておりますし、また、行政情報の電子的提供につきましても積極的に取り組み、より開かれた行政を一層実現していきたい。特に、インターネットなどで行政のあらゆる面をできるだけ示していきたいと考えております。

 この法案でも、十九条において、「行政運営の簡素化、効率化及び透明性の向上に資するため、」この「透明性」というところで情報公開をうたっておるわけですが、「国及び地方公共団体の事務におけるインターネットその他の高度情報通信ネットワークの利用の拡大等行政の情報化を積極的に推進するために必要な措置が講じられなければならない。」こう申しております。この中の「透明性」というのは、まさに委員がおっしゃるように、できるだけ公開しろという意味でございます。

○田並委員

 確かに十九条にはそう書いてあるんですが、そうならば、当然、この行政情報の公開について、新しい法律について、国民の知る権利というのを明確に法律の中に打ち出さなくちゃいけないと思うんですよ。だから、本当に、透明性を高めるということと国民の知る権利というのが何か矛盾しちゃっているような感じなんです。

 ですから、私が言いたいのは、IT革命の推進、非常に結構です。そのことによって日本の民主主義がさらに深まる。その前提として、情報公開制度の中の国民の知る権利というものをきちっと法律として明文化をするべきだし、さらにもう一つ、先ほど申し上げましたように、ついせんだって国の方でバランスシートを出したようですが、もっと明確に国の投資したものあるいは地方が投資したものが、どのように国民のために利益としてつながっているのか、いわゆる行政評価制度というものももっと真剣に、国としてはIT革命と並行して進める必要がある。このことをより明確に基本法の中にすべきではないかというのが私の趣旨でございます。

 特にけさの、これはある新聞を見てびっくりしたのですが、アメリカで機密漏えい禁止強化法案を大統領が拒否をした、拒否権を発動した。この中で、「報道の自由が民主主義社会の根幹をなすことを忘れてはならない」、このようにクリントン大統領が強調して、報道の自由を守る意味で、「機密情報の違法な漏えいは国家の安全に害を及ぼす。」アメリカではかなり機密情報は漏れている、しかしながら「民主主義が機能するために必要な情報を市民が得る権利を擁護することも、大統領の責任だ」と言って、この中身について、法案が国家の安全の保障と国民の知る権利の保障の適正なバランスをとったものではないということで、拒否権を発動しているわけですよ。

 これは、完全な国民の知る権利を重視した大統領の拒否権発動と比較をすると、日本の行政情報公開法というのは、余りにも国民の知る権利を残念ながらおろそかにしている。そういう中でのIT革命の推進というのは、果たして本当に国民のためになる法律なんだろうかどうだろうか、こういう疑念があるということでございます。

○堺屋国務大臣


 外国と比較した場合どうかというのは、いろいろ比べ方あるいは人によってとり方も違うわけでございますけれども、本案におきまして、政府は中央省庁の改革とあわせて行政の効率化、透明化の一層の向上などを目的といたしました政策評価制度を導入しております。この制度において、評価過程を含め、可能な限り具体的な評価内容を公表していこうということにしております。

 御指摘のとおり、このような政策評価制度の導入と着実な実施は、IT革命の推進と相まって行政の効率的な運用あるいは透明性を一段と高めるものと思っております。この基本法にも十九条におきまして、行政運営の簡素化、効率化及び透明化の向上に資するためということで、国、地方でインターネットを利用して通信ネットワークに情報をできるだけ出さなければならない、そういうことを明記しております。

 したがって、このITが進行いたしますれば、どこでもだれでもより多く政府情報に接することができ、また評価も見ることができる。さらに、パブリックコメントなどの制度も非常に今拡大しておりまして、多くの人々からインターネット等を通じて政府に意見もいただく。透明性、しかもインタラクティブに、両方からの透明性ということを発揮していきたい。この法律に書いてある以上にさらに努力していくことが常に必要だと思います。

○田並委員

 これだけの問題でやるわけにいきませんから、私の方で考え方を申し上げます。
 IT担当大臣でございますから、ぜひ今の答弁をしっかりとひとつ実現をするように、この文章の中で、第十九条の「透明性の向上に資するため、」というのではなくて、国民の知る権利をさらに拡大するためぐらいに本来はすべきだと思うのです。これはあくまでも意見ですから、そういうことを申し上げて、IT革命の推進とあわせて、先ほど言った行政情報の公開、さらに行政評価制度の拡充、これに向けてより一層の努力をしていただきたい、このように申し上げます。

 それから、続いて二つ目の問題としては、先ほど来、雇用の問題が出ております。IT革命が進んでまいりますと、先ほど申し上げたように、企業としては、IT投資の効果を高めるためには、当然、組織の構造あるいは人事構造、人事制度、こういうものを変えてくるのは当たり前だと思うんですよ。ですから、ITが進展をしたことによって雇用がそのまま増大をするかどうかというのはまだ甚だ疑問でありますが、長官が言われるように、失業する人と雇用が拡大をする分とを差し引きすると雇用が増大をするという、その言葉を仮に信じたとしても、雇用形態が変わると思うんですよ。恐らく、先ほど言ったように、スモールオフィスだとかホームオフィスだとか、あるいはパートだとか、いろいろな就業形態に変わっていくのではないか。いわゆる正規社員がだんだん少なくなって、非正規社員というのが多くなるのではないだろうか。

 それは、本人の希望があるいはあるかもしれません。本人の希望として、そういう雇用の形態でもいいよということになるかもしれませんが、一般的には、やはり非正規社員と正規社員との間では、現在の雇用の条件からすると、現在はかなり格段の差が出てきていますね。それが、そのままIT革命が進んで、企業がIT革命をどんどんする、そのことによって、雇用の形態まで変わる。変わったのはいいんだけれども、やはり非正規社員と正規社員との間では相当の格差が出るということになりますと、これはゆゆしき問題でありますから、当然、賃金面でも、あるいは従来正規社員であった当時に受けておった、例えば年金制度、医療制度、これらについてもきちっと保障する必要があるのではないだろうか、そういう仕組みにしなくちゃいけないのではないか。労働法だとか何か、必要な法律の改正もそのようにする必要があるのではないだろうか。

 あるいは、もう一つは、自己都合によらず会社の都合で退職をしてしまった。しかし、そういう場面にぶつかるのは、まだ四十代、五十代の人が多いわけですから、そういう人たちが新しい産業に適応するような職業能力の開発の教育を受ける際に、雇用保険だけではとても、仮に住宅ローンをやっておったりなんだりで非常に、雇用保険だけでは生活もできない。しかも、新しい教育訓練を受けるのにも、どうも困難だ。こういった場合の措置というものも、当然法律の改正によってする必要があるのではないか。あるいは、行政指導によってやる必要があるのではないだろうか、財政的な支援もしなくちゃいけないのではないだろうか、このように思うんですが、その辺の仕組みをどういうふうにこの法律の中では考えておられるのか、見解を伺いたいと思います。

○堺屋国務大臣

 委員御指摘のとおり、IT革命の進捗によりまして、経済構造あるいは雇用形態が変化してまいります。正規社員が少なくなり非正規社員が多くなるという予想もされますし、また、非正規社員になった場合に、賃金、年金、医療など、正規社員との格差が出るんじゃないか、それは、現在のところはかなりのところであるというのも事実でございます。

 しかし、経済、雇用の構造が変化し、価値観が多様化してくるという現実を見ますと、パートタイム労働の多様な働き方を選択する者が増加しているのも事実でございまして、若い人の中には、あえて特定のところに縛られないでフリーターでいる方がいいとか、あるいは自分の適性を求めてかわるという人もたくさんございます。IT革命により経済構造が変化すれば、こういったことも進むだろうと思います。

 そうした中で、労働者がその価値観あるいはライフスタイルに応じて多様でかつ柔軟な働き方を選択できるために、働きように応じた適正な措置あるいは労働条件を保障していくことが大変重要になってくるだろうと思います。特に、賃金、年金あるいは医療等につきましては、ポータビリティーを高めて、損得がないようにしなきゃならないという感じが重要だと思っております。私事にわたって恐縮でございますけれども、私のようにちょっとだけ公務員をするとえらい損になるようでございまして、この間もそれを伺って愕然としておったのでございます。

 非正規社員が多くを占めるパート労働については、パートタイム労働法において、事業主には、通常の労働者との均衡を考慮して、パートタイム労働者の適切な労働条件の確保を図る必要な措置を講じるというようなことも定められておりまして、そういう面で、健康保険あるいは厚生年金保険等におきましても、従来からの、正規職員であるか否かにかかわらず、当該就業者の労働日数あるいは労働時間等を総合的に勘案して、常用者と常用的被用者との関係を適切に調整していこうというような努力はしております。
 まだ完全にしていないというところは御指摘のとおりで、政府といたしましても、できるだけこれは確実にやっていきたいと考えております。

○田並委員

 その最後の言葉を信じますので、ぜひひとつ間違いのないようにお願いをしたいと思います。
 それで、ことしも、残念ながら、昨年に続いて中高年の人を中心にして自殺者の数が三万人を超えた。確かに、私たちが論議をしているその瞬間瞬間にも、中高年の人はかなり今厳しい雇用環境、経済構造の変化だとか社会構造の変化についていけなくて、命を落とす人が残念ながら出ているようです。

 したがって、IT革命の推進に伴って、長官が先ほどから言っているように、国民全部の人が豊かな生活ができるような、そういうものに向かって突き進んでいくんだと言う以上は、ぜひその辺の状況も判断をしながら、適切な雇用対策、それこそ、雇用の拡大あるいは失業者に対する手厚い保護と新しい産業に対応できる職業能力開発訓練が充実されるようにひとつ配慮を願いたい、このようにお願いをする次第です。

 長官にもう一つお聞きをしたいんですが、時間が大分経過をしてしまって、例のサイバー安全保障という関係なんです。これは、先ほど質問が中村さんの方からありましたので、簡単で結構です。

 例えば、これもある新聞記事を読みましてびっくりしたんですが、アメリカの前国防副長官のジョン・ハムレさんという方が一九九七年の春就任をして、そこで、まずインターネットを使ってアメリカの国内の各都市の電力供給システムを壊せるかどうか、これをインターネットを使ってやった。その結果、その半数が壊せた、壊せたというより、まあ実際には壊したわけじゃなくて、壊せることがわかった。それともう一つは、アメリカの国防総省のコンピューターへ侵入をしようとした、そうしたら侵入口を見つけた、こういう報道が出ておりました。

 既にアメリカでは、九〇年から九一年、オランダからハッカーがアメリカの国防総省のシステムへ侵入して軍事データをコピーしたとか、あるいは不正な銀行資金の移動が行われたとか、米軍のネットワークへの侵入事件があったとか、日本でも政府機関のホームページの書きかえ事件が最近あった、このように報道されているわけですが、これは大変ゆゆしい問題だと思うんですね。

 一般論として、アメリカや日本、その他の国をサイバー攻撃しようとしてプログラムづくりを始めている国がある、こういう報道までされているわけです。万が一電力供給システムが壊されますと、当然、医療だとか警察、消防、救急などの分野に大変大きな影響が出てくるのは必至であります。

 そういう意味で、国内のセキュリティーだけじゃなくて、IT革命がどんどん世界的に広がっているわけですから、そういう中でこういう事件が発生をしないような国際的な安全保障の枠組みというのを、軍事の安全保障じゃなくて、まさに高度情報通信社会が世界じゅうに広がるわけですから、それに対してのセキュリティーの安全保障というものを国際的な協調で行っていく必要があるのではないか。その視点がこの基本法の中では見当たりませんので、その辺をどう考えているのかということをお聞きしたいということです。
 これは、時間がなくなっちゃって済みませんが、郵政大臣にせっかく来ていただいているので、郵政大臣の方に。

○平林国務大臣

 田並委員のいわば国民生活の基本を押さえた御議論を拝聴しておりまして、今のセキュリティーの問題、サイバーテロの問題、かようなことにつきましても、私は同じような危惧を持っております。

 この問題につきましては、既に犯罪の取り締まりという観点から、サイバーテロの防止とか情報のセキュリティーの問題を取り上げて法制化する。一部法制化されておるわけでございますが、今後の進展いかんによりましてさらに有効な法的な方法を見出さなければならないかもしれぬ、そう思っております。今後、十分に政府において議論すべきであろう、さように私も考えております。

 郵政省といたしましても、さような観点から、この制度なりあるいは法制の運用に誤りなきを期してまいりたい、そのように考えております。

○田並委員

 IT担当大臣に最後に聞きますけれども、二十三条の中で「国際的な協調及び貢献」というのがあるんですよ。この「国際的な協調及び貢献」の中に、本来、今言ったサイバー安保的なものを、国際協調的なものを含むべきではないか、このように思うんです。

 最後にひとつ大臣の御答弁を聞いて終わりたいと思います。

○堺屋国務大臣

 さきの九州・沖縄サミットにおきましても、IT憲章を定めまして、ITの利益を全世界に広めるというので、G8の作業部会を設立いたしました。日本はもちろんこの作業部会にも積極的に参加しておりまして、また、日本自身のイニシアチブで国際的なデジタルデバイドの解消にも努めております。

 この国際憲章の中にも、御指摘のセキュリティーの問題、これは非常に重要な問題として取り上げられておりまして、それにも種類も、今御指摘のようなテロ的な行為、スパイ的な行為、それからもう一つ、個人情報のようなものを流されるという行為、こういうものも含めて国際的に守っていかなきゃいけない、これは九州・沖縄サミットで決められましたIT憲章の中でも強くうたわれているところでございます。

 現実問題といたしましては、なかなかとめる方と侵す方とがイタチごっこのようなところがございますが、これは全世界、全人類の問題としてぜひ取り上げていき、その種の犯罪をなくさなきゃならないと真剣に考えているところでございます。

○田並委員

 以上で終わりますが、特に、どうも高度情報通信社会システムというのが世界的にできると、今度は武器による紛争じゃなくて、ハッカーだとかそういう情報通信をどんどん侵害してくる、そういうことでの危機というのが大変高まるんじゃないだろうかというふうに思うんですね。そういう意味で、今長官が言われたそのことをぜひ基本法の精神としてやはりしっかりと置いておかなくちゃいけないんじゃないだろうか、こういうふうに思いますので、その辺も十分配慮してこの基本法の制定については考えてほしい、このように考えます。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

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